モンテッソーリの教育DVD
- DVD発売記念
- みなさん、はじめまして。松浦公紀です。
このたび、私が出演・監修を手掛けたDVD「モンテッソーリ教育に学ぶ子どもの見方」が発売されることになりました。これは、「スカイパーフェクTV!」762チャンネルで放送していた同タイトルの番組(全50回)を、DVD14枚にまとめたものです。2007年が、モンテッソーリ教育「子どもの家」誕生100周年ということもあり、記念発売されることになりました。
さて、この「モンテッソーリ教育」、みなさんはどんなものかご存知でしょうか?
- 松浦公紀先生
- 子どもサイズの机やいすは、モンテッソーリ教育から!
- 「モンテッソーリ教育」の「モンテッソーリ」とは、イタリア人の医師であり、教育者の、マリア・モンテッソーリ(1870-1952)の名前からきています。マリア・モンテッソーリは、医師時代の障害児との出会いをきっかけに、子どもを観察することによって子どものさまざまな姿を発見しました。それまで子どもは、大人によって育てられる「受け身」の存在だと考えられていましたが、モンテッソーリの観察によって、「子どもはその時期その時期に身につけるべき発達の課題とうまく出会う環境さえ整えられれば、自ら育っていく」存在だということがわかりました。
また、「子どもには、大人とは異なる子どもだけの世界がある」ということも発見したモンテッソーリは、子どもに見合ったものが必要だということに気付き、世界で初めて子どもサイズの家具を子どもに与えました。今では幼稚園に子どもサイズの机やいすなどがあるのは当たり前ですが、モンテッソーリの時代より前にはなかったものなんですよ。
このように、モンテッソーリ教育では、出発点はいつも子どもです。だから、子どもにとって無理がない、というところがモンテッソーリ教育の最もすばらしいところではないでしょうか。
- モンテッソーリが発見した、子どもの驚くべき吸収力
- 子どもには、ある特定のものごとに非常に敏感になる時期があり、敏感になった対象をいとも簡単に吸収してしまう特別な力があります。モンテッソーリはこれを「敏感期」と呼び、その重要性に注目しました。
例えば、言葉の敏感期を例に挙げましょう。話し言葉に対して非常に敏感で、簡単に吸収してしまう力のある時期は、胎児の7ヶ月ごろから3歳くらいまでだといわれています。この時期にたくさん語りかけをしてもらえれば、子どもは簡単に話し言葉を覚えてしまいます。それがたとえ外国語であっても同様です。しかし、その時期を過ぎてしまうと、それまでと同じようにはいきません。3歳くらいまでにあまり語りかけをされず育った子どもは、そこから一生懸命言葉を教えてもらっても、なかなかすぐには身につかないのです。
もちろん言葉以外にも「数」や「感覚」など、さまざまな敏感期が存在します。せっかくならば、子どもが無理なく自然に吸収できるこの時期に、力をつけさせてあげたいと思いませんか。そのために大切なことは、子どもの興味が今何に向いているかをしっかり見て、その興味に対応するものと出会わせてあげることです。対応するものと出会う環境を整えさえすれば、大人が教え込まなくても、子どもは自分の力でいろいろな力を身につけていきます。
- 実は「いたずら」も敏感期のあらわれ
- また、幼児期の「いたずら」も、実は「敏感期」と関係しています。お子さんがいらっしゃるお母さんの多くが経験されたことがあるかと思いますが、ティッシュペーパーを箱から全部出してしまう、冷蔵庫のドアを何度も開け閉めする、スプーンやコップを何度もわざと床に落とす、お母さんの口紅を出して鏡や自分の顔に塗る、etc…。これらの行動は、お母さんからすると 困った「いたずら」に 見えますが、皆さんもご承知のとおり、子どもは決してお母さんを困らせようと思ってやっているわけではありません。この時期の子どもは、とにかく手や指を動かしたくて仕方ない、自分の手によって周りのものを動かすことができることがおもしろくて仕方ないのです。つまり「運動の敏感期」にあるわけです。この時期に、運動の興味に見合った環境を整えてあげれば、子どもは自らすすんでさまざまな運動を獲得していきます。
- モンテッソーリ教育の「教具」とは? 「提示」とは?
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子どもの興味に見合った環境を、モンテッソーリは「教具」や「用具」という教材類で具現化しました。例えば、指先の運動のためのボタンが縦一列に取り付けられた「着衣枠」、大きさを識別するための10個の円柱とそれを収める穴があいたブロック「円柱さし」、音の強弱を識別するための円筒の中にそれぞれ砂やお米などが入っている「雑音筒」など、子どもの興味に見合ったたくさんの用具や教具があります。
ただ、これらの教具は、使い方を知らない子どもがいきなり使うことはできません。そこで、子どもにやってほしいようにまず大人が使い方をやって見せることを、モンテッソーリ教育では「提示」と呼びます。提示はあくまで「見せる」ことであり、決して「教える」ことではありません。
そして、提示を終えたあとには必ず「やってみる?」という言葉をかけます。もしこのとき「今日はやらない」と言うなら、無理にはやらせません。あくまで選ぶのは子どもです。大人の押し付けによってやらせることがあってはならないのです。
選んだものが敏感期とぴったり合うものだった場合、子どもは驚くほど集中して、何度も何度もその活動を繰り返します。そして、自分の意志で「やめよう」と思うまでじゅうぶんやったとき、子どもの中には満足感、達成感が生まれ、これにより、自発性や主体性が育っていくのです。
- 本ではわからなかった提示のポイントがよくわかる!
- このDVDでは、上述のようなモンテッソーリ教育の概要はもちろんのこと、私が実際に子どもたちに提示を行っている様子も多数収録しています。モンテッソーリ教師を目指している方、また現在モンテッソーリ教師の方には特に、今まで本だけではわからなかった実際の提示のポイントが、映像によってよくおわかりいただけることと思います。
この機会にぜひご覧いただき、モンテッソーリ教育について、より理解を深めていただければ幸いです。
- おまけ・・・
- イタリア通貨がユーロに切り替わる以前に流通していたイタリア1000リラ紙幣には、マリア・モンテッソーリの肖像画(表)とその学習風景(裏)が描かれていました。モンテッソーリがいかに偉大な功績を残した人物かがわかりますね!